南湖神社には、松平定信公がしばしば来遊された茶室「松風亭蘿月庵」が現存しています。
松平定信公はご自身で「鎮信流」という流派を立ち上げたほどの江戸時代を代表する茶人の一人です。
寛政年間、白河藩の重臣三輪権右衛門が茶人であった父仙鼠のために茶室を建てようと府内九番町にあった別邸内に
藩主松平定信公より拝領した茶室図面に基づいて建立されたと伝えられています。
定信公は蘿月庵を何度も訪れて茶会を催しており、いくつかの逸話が残っています。
寛政七年(1795年)二月、茶室の傍らのしだれ桜の素晴らしさに目を見張り
公はすぐに茶筅に墨をつけ「垂櫻」とき揮毫されました。これは茶掛にされ現存しております。
享和二年(1802年)八月、公は水盥に「蘿月」と揮毫され、その裏には
「壬戌秋八月ここに来りてこれを書すこと蚯蚓(とかげ)の如し、人の笑わんことをそこの月たか笑ふともおけやおけ」
と即興で狂歌をしたためられました。
これは「蘿月庵」という名称の由来を伝えるものといわれており、その水盥も現存しております。
蘿月庵は文政六年(1823年)に松平家が桑名に移封されるときに家臣常盤惟親に譲渡され
府内道場小路にあった屋敷内に移築されたのですが
大正十二年(1923年)、南湖神社創建を奉祝して寄贈され再度南湖神社境内に移築されています。
また蘿月庵は「由緒が明確で原型をよく保った数少ない近世茶室の一つである」とのことから
昭和三十八年(1963年)には白河市重要文化財に指定され
平成六年(1994年)には福島県重要文化財に指定されています。
蘿月庵は平成23年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により、壁が落ちるなどの被害を受け
約1年7か月にわたり拝観を中止しておりましたが、修繕工事が終了したのに伴い
拝観および茶室の利用を再開いたしました。
修繕工事の模様
平成24年10月14日には、修繕工事が竣工した蘿月庵にて「秋季大茶会」が行われました。
月釜茶会のご案内
蘿月庵および南湖神社に隣接する日本庭園「翠楽苑」内の茶室を使い、毎月茶会が催されています。
(蘿月庵は冬期間11月〜3月は使用しません)
白河地方各流派の先生方が所属する「白河茶道連盟」が主催し
毎月第二日曜日(変更の場合有)に開催されます。
特に、5月と10月は茶席が多数設けられ非常に大規模なお茶会となっています。
また、一般の方もお茶券をお求めいただければ茶席に参加が可能です。
問い合わせ:白河茶道連盟 0248−22−1811(須釜)